地域の言葉で書いた昔ばなしです。 声に出して読んでみてください。
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下之郷(しものごう)のお城はよぉ、田んぼのなかのちいせゃあお城だったわ。お城の殿様はどえりゃあ弓の上手な殿様で、鳥を撃つことがでゃあ好きだったんだと。今日は小川で遊んどる水鳥を狙い、明日は空を飛んどる鳥を射落とし、というあんびゃぁ(案配)で、毎日でかけとらしたげな。
ある日のことだったわ。
「殿様、あそこにおしどりが‥‥」
家来のひとりが芦の葉陰に寄りそっとる二羽のおしどりを見つけたんだわ。
「殿様の腕前なら二羽いっぺんに仕留められましょう」
「そううみゃあ(うまい)ぐあいにいくかどうか分からんがや」
そう言いながら、殿様は狙いを定めて矢を放った。

ヒューッ!
そのときだわ。オスのおしどりが羽をひりゃあた(広げた)かと思ったら、メスのおしどりをサッと押しやった。矢はオスのおしどりの胸をいにぃてまった(射抜いてしまった)んだわ。助かったメスのおしどりは悲しそうな鳴き声を残ぇて、逃げてまったんだと。
その日の晩げのこと。どっかしゃんからやって来た女の人が殿様の枕元に立って、
「殿様、殿様はわたしのでゃあじ(大事)な人を射殺ぇてまったね。あの人はわたしをかばって‥‥」
と涙を流した。

けれど殿様は、夢から覚めると、
「夢だったきゃあ」
そうつぶやくなり気にもかけえせなんだんだと。
それからちょうど一年たった日のこと。殿様は、去年とおんなしとこでまた一羽のおしどりを射止めたんだと。よう見ると、胸のへんがふくらんどって、調べてみると羽のなかからあのオスのおしどりの頭が出てきたんだわ。

「殿様、この頭はあのときわたしが切って、庭のすみっこにほかっといたもんです」
「ううん、そうきゃあ。そう言えば、あの晩わしの夢に現れたわ。そんでも、あれからずうっと胸に抱ゃあとったとはなあ」
殿様は、おしどりの愛情にこころ打たれてまった。そしてちゃっと、お城のなかにお寺を建ってて、二羽のおしどりを弔ったんだと。

おしまい。
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■天柱寺(てんけいじ)■
愛知県西春日井郡春日町大字下之郷字高札3-3
殿様が建てたお寺は、今は畑になってしまいましたが、本尊はすぐ近くにある天柱寺の白弓殿に移され、今も大切に供養されています。また同寺には物語の四場面を描いたふすま絵も残っています。
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この原稿は、 毎日新聞「くりぱる」2006年9月24日発行号に掲載されたものの転用です。

